2010年ごろ、私は、大学受験のたくさんの参考書やら問題集やらを上海のアパートに持ち込んで勉強していた。
上海の夏は、日中の気温が40度まで上がる日もあり、また夜9時を過ぎても34度を下回らなかった。
そこで夏の日中、よくアパートから逃げ出し、近くのカルフール古北店内にあるマクドナルドに行くか、それとは反対方向にある仙霞通りのケンタッキーフライドチキン店へ行き、食事をしてから勉強していた。
外がどんなに暑くても、どちらもエアコンがよく効き快適だった。
ある時、後者のケンタッキーフライドチキン店で勉強していたところ、あるお年寄りが店内に入ってきて、空いている椅子に腰掛けるとハーモニカを吹き始めた。
もちろん中国のお年寄りがファストフードを注文して食べたりしない。
このような時、日本なら、相手がお年寄りでも若い人でも、店員さんが慌てて飛んできて、「お客様のご迷惑になる」から演奏をやめるか、さもなければ店外に出て行ていくよう要求される。
しかし、中国では全く様子が異なった。
店員もお客も誰一人気にする者はおらず、あるものは演奏に合わせて口ずさんだり、演奏が終わると拍手する者もいた。
また別の日にも、このお年寄りが店内に入ってきてハーモニカ演奏を披露した。
中国人の日本人にはない寛容さと、お年寄りを大事にする高い道徳心を感じた出来事である。