静安区で見かけた強烈な印象が残った物乞いのペア

私が高校生だったころまでは物乞いがいた。

国鉄T駅構内の地下道で見かけることがあった。

高校3年生のときに引越しをしてこの地下道を通る機会がなくなり、その後のことはわからないが、現在はいないのではと思う。

 

中国滞在時、上海の地下鉄の車両の中で2人組の物乞いをしばしば見かけた。

お年寄りと小さな子どものペアであっ,た。

おじいちゃんと孫ほどの年齢差があった。

お年寄りは、ハーモニカか何かの楽器を演奏しながらゆっくりと車両内を移動し、子供は、小さな鉢を持ちながら物乞いの後をついて歩いた。

小さな子どもが不憫に思われた。

 

中国の物乞いで私が最も強烈に印象に残っているのは、上海の静安区で見かけた、これもペアの物乞いである。

静安区には静安寺という有名で大きいお寺があり、その隣に久光百貨店という、日本人が造ったのではと思わせる名前の百貨店があった。

私たちは、時々気分転換にこの百貨店を訪れウィンドウショッピングを楽しんでいた。

静安区に行くとすれば、決まってその久光百貨店に行く時であった。

ある時、静安寺が面した歩道を歩いていると、その歩道に若い夫婦と思われる2人組が物乞いをしているのが見えた。

そのうち夫の方は、跪いて大泣きしていた。

その隣で妻の方は、布団の中に横たわってブルブル震えていた。

驚いてしばらく見ていたが、妻の方のその震えは、演技とはとても思えなくて、本当に何かの病気や障害で震えが止まらないように思えた。

夫の方も片時も休まず大泣きし続けている。

 

上海市政府は、この人たちを助けないのか」「静安寺のたくさんのお坊さんは、この人たちのために何もしないのか」など考えながら見ていた。

そのような人通りの多い繫華街に布団を持ち込んで妻を寝かせて衆人の目にさらすなんて、日本人の常識では考えられない。

 

そもそもその一セットの布団と動けない病気の妻をどのようにしてそこまで運んできたのだろうかという疑問は残る。

俳優志望者の実演訓練だったのだろうか。